「生物多様性」という言葉はご存知でしょうか?人々の暮らしはたくさんの自然の恵みを享受して成り立っています。これを生態系サービスと呼んでいます。東日本大震災以降、生態系サービスの内、洪水緩和機能に着目し、防災や減災に活かそうという動きが高まってきました。しかし、日本の自然の多くは人の手によって維持されてきた二次的な自然なので、生態系サービスの享受には人々の介入が不可欠です。 持続可能な社会の実現に向けて、皆さんで自然との関わり方を考えてみませんか?
ヒメバチという昆虫を知っていますか?世界中に存在するありとあらゆる昆虫の中でも、最も種数が多いとされているのがヒメバチを含む寄生蜂と呼ばれる虫です。ヒメバチの仲間は国内だけでも1700種以上確認されており、普段意識することは少ないけれど実際はとても身近な昆虫です。本プロジェクトではいわゆる「マイナー昆虫」であるところのヒメバチをより多くの方に知ってもらうべく、実際に数百の標本を用いてヒメバチの多様性を目で見て感じていただきます。
タカやフクロウなどの猛禽類は食物連鎖の頂点に位置し、広い生息地と沢山の餌を必要とします。そのため彼らが生息している場所は生物多様性の度合いが高い環境であるとされ、「アンブレラ種」とも呼ばれています。猛禽類が何を食べているのかを把握することは彼らの生態を理解する上で非常に重要なため、世界的に数多くの研究がされてきましたが、それらの多くは目視による解析のため専門的な知識と経験が必要でした。そこで私は、近年発展しているDNAメタバーコーディングという技術を用いて猛禽類が何を食べているのか解析しました。
水利システムを形作る「モノの移り変わり」をプロセスとして理解するとともに、人との関わりによる意味づけだけでなく、GISやドローンといった新規の分析技術を用いて地理・地形的な意味をそのプロセス、歴史的変遷に紐付けて解釈することを目的とした研究です。熊本県水俣市を対象に、飲料水供給施設へのアンケート調査、聞き取り及び参与観察やGISを用いた空間分析によって生活用水の変遷、農業用水の変遷を分析し、水利システムの合理的な維持管理やこれからの新たな運営手法について寄与しうる「伝統知」を明らかにします。
人口減少社会が、激甚化する洪水害に対して既存のインフラを増強、維持することが可能でしょうか?その課題に対する一解決策として注目されているのが「生態系の機能を活用した防災・減災(Eco-DRR)」です。自然が本来持つ洪水緩和の機能を活用して損害に備える方法は自然資本の有効活用でもあり、持続可能な手段です。平時は野生生物の生息地を提供するなど生物多様性保全に貢献し、災害時には溢れた水を蓄えて自律的に流す。そんな土地利用ができたら社会はどれだけの恩恵を被ることができるか。経済効果を滋賀県で試算します。
都市域と農村地域は植物や人工物の影響など様々な環境要素が異なります。しかし関東平野においてヤマトシジミとツマグロヒョウモンの2種類はその両方に生息しています。2種が食草とするカタバミ類・スミレ類は在来種だけでなく園芸種や帰化種も多く生育していますが、それだけではなく2種の蝶自身も都市環境へ何かしら適応していると考えられます。2種に起きている形態的・遺伝的変異を明らかにすることで都市への適応が形態や遺伝的多様性へ与える影響を評価し、都市における進化を検討します。
本研究プロジェクトでは、自然環境・資源管理・経済・人的交流を踏まえ、地域のレジリエンスを高める地域循環共生圏の構築を進めていきます。今回対象とする熊本県阿蘇地域は、活火山のカルデラの中に4 万人以上もの人口を擁し、一大農業生産地域であるとともに、日本有数の観光地でもあります。火山や豊富な湧水、人の働きかけにより維持されてきた草原など、地域の自然資本に基づく経済活動(農業生産や観光など)に着目し、それぞれの地域循環共生圏が地域のレジリエンス構築にどのように寄与しうるのかを検証する。